2022年6月9日
数日前に発表され、インドネシア国内のみならず、日本でも即日記事にされた、ボロブドゥール寺院入場料値上げ。
多くの批判が巻き起こり、結局、政府は6月8日に「先日発表した値上げは一旦見送りとする」と方針を転換させました。
前言撤回は、“インドネシアあるある”。…というか、むしろ今回の件は、運用開始日すら決めていなかったことから見て、政府も「一旦発表してみて世論を見てみよう」くらいの気持ちだったんじゃないかと感じます。
そして、これは政府の目論見どおりだったのか、もしくはスポークスマンの失敗だったのかは判りませんが、発表の仕方もしくは記事の書き方が悪かった。
・現在、ボロブドゥール寺院には上がることができず外観観光のみのところを、寺院に上がって内部観光するための入場料が新たに設定されること。
・内部観光は特別扱いのため入場料を高額に設定すること。
・内部観光が開始されたあとも現行の外観観光は現行の入場料で可能なこと ( つまり外部観光入場料と内部観光入場料の2種が存在し、観光客は自由意志で選択できること )
が前面に明示されておらず、USD100という数字だけが大々的に報道され、ボロブドゥール寺院に入るには、等しく誰もがUSD100払わないといけないかのように見えてしまった。
そもそもコロナ前は現行の料金で内部観光もできたわけですが、何の柵もなしに剥き出しのまま観光客が気軽に触れられるかたちで公開していたことの方がスゴイ。
他の国の歴史的建造物でこんな見せ方しているところなんてないでしょう。
あまりにも大らかというか、性善説&良識信奉というか。
観光業従事者としては以前のように今の料金で内部観光が可能となることを期待してもいましたが、ボロブドゥール寺院のファンとしては、世界に誇れる遺産だからこそ、「未来に遺すには」という視点で、制限が必要だと思います。
確かにUSD100は高い。
世界的に人気のアンコールワットだって、たかだかUSD35くらい。
その3倍!
でもわたしはちょっと嬉しかったんです。ボロブドゥール寺院にはUSD100の価値があると信じてる人たちがいるんだなーと。
はてさて、ボロブドゥール寺院の内部観光は一体どうなることやら。
もう少し値段を下げるつもりなのだろうか?
いずれにせよ、夏までには何らかの形で内部観光も再開してほしいところです。
ボロブドゥール寺院って外部観光だけだと本当のすごさはなかなか見えない。
観光に来られた方には内部も見て、ボロブドゥール寺院のすごさを知ってほしい。
でも、内部観光料金が高額だと外部観光が主流となるのかな…。
そうならば、ボロブドゥール寺院の内部をバーチャルで見ることができる多言語対応の施設があったらいいなぁ。
政府には遺跡保存と同じくらい、はるばるボロブドゥール寺院まで来てくれた観光客の満足度のことも考えてほしいです。
追記➀
もともと、コロナ前から壁面への落書きや彫刻の摩耗などはかなり問題視されていて、遺跡保存という観点から内部観光に関して識者のあいだでずっと議論が行われていました。
ボロブドゥール寺院に出入りする関係者のなかには「いつかは内部観光は制限がかかるのでは?」と漠然と思っていた人も少なくないはずです。
コロナでしばらくクローズし、営業再開時に外観観光のみとしたのは、ソーシャルディスタンス確保というコロナ関連の理由だけではなく、クローズ期間中に専門家による実地調査や議論がなされた結果だと思います。
また内部観光を特別料金とするのも、収入面という面だけではなく、観光客の立ち入りが遺跡に及ぼす影響は甚大・深刻で入場者数を大幅に制限せざるを得ないという現実があるのだと思います。
追記②
外観観光のみが続くなか、一時は「内部観光は政府関係者・仏教関係者・メディア関係者・政府から特別許可を得た人のみで、一般観光客は内部観光不可とする」と決まりかけたこともあったと聞いています。そのような閉鎖的な案が覆り、料金的な問題があるとしても、一般観光客にも内部観光の選択肢が示されたことは一歩前進だと捉えています。