これは、随分前に、ボロブドゥール寺院の清掃修復係の人から聞いた話です。
「ボロブドゥール寺院の多くのものは”9″につながる」というのです。
寺院のオリジナルは9層構造。
ストゥーパの数は72で、7+2=9。
仏像の数は504で、5+0+4=9。
階段の数も足していくと9になる。
そのおじさんは「ボロブドゥール寺院にとって9は重要な数字なんだ」と力説していました。「なんで9なの?」と聞くと、「それはわからん」とあっさり話が終わってしまいましたが…。
私が読んだボロブドゥール関連の本やガイドの話には9の話は1度も出て来たことはないのですが、学者でも研究者でもない、でもきっとボロブドゥール寺院を一番近くで一番長く見続けているであろう清掃修復係のおじさんのその話はとても印象深いものがありました。
他に”9″につながるものはあるのだろうか…とボロブドゥール寺院を訪れる度に思っていたのですが、この度、お客様との会話のなかから新たな”9″の可能性を見つけました。
その日、ご一緒したのは中国にルーツをもつ建築家の方。
ボロブドゥール寺院を上から下へと見学し、最後に「隠れた基壇」に来た時です。( 現在ボロブドゥール寺院の下の部分は石のカバーで覆われておりオリジナルの設計ではありません。その石のカバーの一部を取り除きオリジナルが部分的に見られるようになっているのが「隠れた基壇」と呼ばれる場所です )。石のカバーも入れてボロブドゥール寺院は一辺が121mの正方形ですと話していると「オリジナルは何mだったの?」と聞かれ、そう言えばオリジナルの大きさって聞いたことがないなと気づき、建築家のお客様がご自身の歩幅で石のカバーの幅を測定したところ、10mちょっとあることがわかりました。
もしもの話ですが、もし石のカバーが11m幅ならボロブドゥール寺院のオリジナルの一辺は99mだったことになるのです。
お客様によると中国では9は「久」と発音が同じであることから縁起のいい数字だとのこと。ボロブドゥール寺院を建造した王朝は当時から中国王朝と繋がりがあったと文書に残っているし、中国の影響で9に合わせたデザインをしたのではないか…と。
いやーロマンですね。
意味があるのか、偶然なのか、ボロブドゥール寺院の秘数“9”。
ボロブドゥール寺院は解明されていないことが多い。だからこそ色んな推測ができて面白いんです。