実在の人物をモデルとし、史実をベースに描かれた小説。
舞台はジャカルタ。
主な登場人物はスカルノ大統領とその第3夫人の日本人女性 ( あのデヴィ夫人がモデル )。戦後賠償という特殊な背景があるなかで出会ったスカルノ大統領・夫人・日本企業戦士が時に相手を巧みに利用しながら、時に人間的な感情を抱きながら展開する人間模様が描かれています。
灼熱の太陽のしたで進む工事現場の風景、スカルノ大統領が暮らす宮殿の爽やかな南国の光などが行間から浮かび上がり、近代化に動き始めたジャカルタという街の面白さも旅情を誘います。
上下本で登場人物も多いですが、するすると読めるのは作家さんの力量ですね。
どれが事実で、どれが創作なのか。そんなことを考えながら読むものまた面白い本です。


著者は東洋建築史専門の建築士。
こちらに住んで1年半ほど経ったころに急に「バティックについて勉強しよう!」と思い立ち、ネットでバティック関連の本を数冊入手しました。
マニアックな人が作った、マニアックな人のための、マニアックな本です。
作者は軍属の報道員としてジャワに入り、日本軍政下で9ヶ月ほど滞在し、ジャワとバリを巡りました。
この本の中に「ボロブドゥールで静かなブームを呼んだこと」というエッセイがあります。たった5ページの短い、でもくすっと笑える好エッセイです。
2002年にNHKで全6回シリーズでアジアの古都をピックアップした番組が放送されました。
根っからの根なし草で大正から昭和にかけてアジアやヨーロッパを旅し、独特の作品を発表し続けた詩人・金子光晴。
この本はボロブドゥールに魅せられた作者の情熱の結晶です。